断食はダイエットとして本当に効果があるのか。勘違いされている真実

断食はダイエットとして本当に効果があるのか。勘違いされている真実

食、医療など"健康"にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。 「断食」「プチ断食」「ファスティング」など、一定期間食べ物を断つ方法が、体内のリセットやデトックスができる"健康療法"として、そしてもちろんダイエットに効果が出やすい方法として紹介されているのを目にします。果たして本当なのでしょうか?

前回は、「結局一日に何回食べればいいの?」という話題でしたが、それでは、食べない=断食、という選択肢はどうなのでしょうか?

 

人間は誰しも毎日断食している

ところで、断食って試してみたことはありますか?

実は人間は誰しも、自分の意思で選択しようがしまいが、自然に断食をしています。この断食は「睡眠」によるもの。断食は英語で「fast」といいますが、朝食「breakfast」は「fast=断食」を「break=中断」する、最初の食事という意味にもなっているんですね。

さて、2009年に報告されたOECD(経済協力開発機構)のデータによれば、18カ国における1日の平均睡眠時間を調査したところ、1位はフランスの530分(8.8時間)、2位は米国の518分(8.6時間)で、18カ国すべての平均は、502分(8.4時間)でした。

そのなかで、日本は17位で470分(7.8時間)、18カ国で一番短い国は韓国で469分(7.8時間)だと報告されています。

ですから、個人差はあっても、私たち人間は誰もが毎日、7~8時間くらいの断食をしているのです。

■参考文献 SOCIETY AT A GLANCE 2009: OECD SOCIAL INDICATORS – (c) OECD 2009「Special Focus: Measuring Leisure in OECD Countries」

問題は、睡眠時間以外にも断食が必要かどうか? ということです。

この答えを、まずは断食のさまざまな動機から考えてみましょう。

1.宗教
断食は、古くから多くの宗教に取り入れられています。キリスト教の四旬節(2014年は3月5日~4月17日。現在は断食というより節食)、イスラム教のラマダン(断食月。2014年は6月28日~7月28日)、ユダヤ教贖罪の日(1日断食)のような特定の期間の断食。さらに仏教やヒンズー教などでも、断食が行われてきました。
2.抗議の手段
例えば、マハトマ・ガンディーの、非暴力抵抗運動としての断食(ハンガーストライキ)は有名です。
3.医療行為
胃カメラなどの検査前、手術前などの医療目的によるものです。
4.睡眠
前述したとおり、自然な断食です。
5.健康
減量、ダイエットなどの目的で行うもの。日本で関心が高いのは健康を目指したものですね。

今回は特に、この5番目にあたる、断食がダイエットや減量に効果があるのかどうかを考えたいと思います。

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断食って、ダイエットに効果はあるの?

 

断食は減量やデトックスの良い方法ではない!?

最近は、米国でも断食、とくに断続的な断食(Intermittent Fasting)が流行しています。

方法は一定の間隔をあけて断食を繰り返すというもので、16時間おき、1日中、1日おき、3日おき、1週間に1度、1週間に2度、2週間に1度、隔週など、間隔も継続期間はさまざまです。また断食の方法も、一切何も口にしない、水のみOK、フルーツジュースのみOK、野菜ジュースのみOKなど多様です。

こうした断食は、減量やダイエットに効果があるのでしょうか? 逆に、断食は健康に害はないのでしょうか? 実際、人間は、古くから断食をしてきましたが、医学的には議論が続いています。英国、米国の専門家の情報を参考に、その問題を解説しましょう。

■参照サイト National Health Service:NHS「Fasting: health risks」 WebMD「Weight Loss & Diet Plans」

結論から言ってしまうと、多くの医療の専門家は、断食が減量の良い方法ではないと考えています。

断食の魅力は短期間での減量です。ところが体の水分が一時的に減るだけで、すぐにリバウンドします。これ自体は実感している方も多いと思うのですが、さらに断食によって代謝が低下し、より太りやすくなる可能性があることが指摘されているのです。

また、断食に加えて腸の浄化のために浣腸などを行うダイエットが一部で流行した時期もあったようですが、これは腸に存在する腸内細菌のバランスに悪影響をおよぼし、非常に危険です。以前のコラムでご紹介いたしましたが、腸内細菌のバランスは、私たちの健康に非常に重要なのです。

 

浄化やデトックスダイエットは何の科学的根拠もない

米国でもデトックスダイエットは人気で、本やメディアで多く紹介されています。そんな状況の中、先日、ボストングローブの取材に対して、ハーバード大学のフランク・サック教授は、「減量に対する浄化やデトックスダイエットの効果について、何の科学的根拠もありません」と答えています。

■参考記事 THE BOSTON GLOBE「Why do cleanse detox diets remain so popular!?」

また、断食のリスクとして、胸焼け、糖尿病の血糖コントロール不良、頭痛、脱水、便秘、ストレスなどがあります。断食ががんに効果があるという噂もありますが、米がん協会は、断食は科学的証拠に基づくと、ヒトのがん治療として支持されていないと結論づけています。

■参考サイト American Cancer Society「Fasting」

さらに以下の方は(言うまでもないかもしれませんが)、断食による健康の害が非常に危険ですので、断食をするべきではありません。

妊娠、授乳中の女性 高齢者、子供 栄養失調の方 不整脈の既往歴のある方 肝臓または腎臓障害のある方 糖尿病の方 慢性疾患の方

これまでの研究結果を総合的に考えると、医師としての私の意見は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富なバランスのいい食事、適度な運動を継続すれば、睡眠時間以外の断食は必要ないと思います。良い睡眠で、体内時計を整えることも、健康の維持に大切です。ただし、検査前や手術前などの医療行為のための絶食は例外ですので、専門家の指示に従ってくださいね。